消えないで、媚薬。




「うん……こっちこそごめん。はっきり言わなくて…」




最低だ……私。
これじゃどっちつかずだよね。




「そっか……」って明らかにテンション下がり気味の時田くん。




「つーわけなんで、人の彼女ホイホイ誘うのはやめて下さいね?」




「ちょっと…!」




「香帆もいつもみたいに慶太って呼べよ」




なっ…!笑顔で命令口調…!
完全に時田くんに釘刺してる。
何て声かけたらいいか……
どう切り抜けよう……





「あれ?まだ信じてません?俺たちの仲」




「え?」




隣で慶太がそう言った。
俯いていた時田くんが顔を上げた瞬間。
私は慶太に顎クイされその場でキスされる。
抵抗する間もなくほんの一瞬だったけど慶太なりの威嚇なんだろう。




「ちょっと…慶太」




「分かっていただけました?それじゃあ失礼します。行こう?香帆…」




「えっ、あ……時田くん、おやすみ!」




頭パンクしそう………
何で時田くんの目の前でキスなんか……
きっと驚いて声も出ないパターンのやつだ。
オートロックを解除して中に入ってく。
一度も振り向けないままエレベーターに乗り込んだ。




扉が閉まった瞬間、壁に押し倒される私。
顔見ないでも分かる……
めちゃくちゃ怒ってる、慶太……




「香帆さん……分かってるよね?」




二人きりになれば元の呼び方に戻るんだ……
顔を上げて詰め寄る彼に少なからず覚悟を決める。




「なに堂々と浮気してんの?見てたよ」




「浮気じゃないっ…!本当にただの同級生だから」




「香帆さんはそう思ってても相手はそうじゃない!いい加減自覚しなよ、フラフラすんな、そんなんだから男はつけあがるんだ」




「わ、悪かったわねフラフラして…!嫌ならこんな女フレばいいじゃない!」








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