消えないで、媚薬。
あ〜!腹立ってきた!
自分だってやりたい放題のくせして人を軽い女みたいに言っちゃってさぁ…!
そりゃ二人きりでご飯行ったのは悪かったかも知れないけど人前でキスとか子供じみたマネすんのもどうかと思う。
そこはやっぱ高校生というか……
「香帆さんそれ本気で言ってる…?」
「え……?」
真っすぐな視線と掴まれたままの手。
悲しげな瞳に後悔の念が押し寄せる。
ヤバ……私こそ子供じみた言い草だったよね。
悲しませておいて逆ギレとかダサ過ぎる……
エレベーターが階に到着し扉が開く。
彼が手で扉を押さえながら隅に追いやられてる私は身動き出来ず外に出られない状況。
相当怒ってるよね……どうしよう。
視線を逸したら顔が近付いてきた。
秒で重なった唇は驚くほど優しくてゆっくり掻き回す。
罰でも怒りでもなく、報復でもない。
繊細でいびつなキス。
「このキスとお別れ出来る…?」
そんなこと……出来るのかな………?
自分で言っておきながら自覚出来てなかった……?
慶太が居なくなるということはそういうこと。
別れるってそれ含めてなんだ。
なに動揺してんのよ………
フラれ待ちだったんでしょ……?
このまま首を縦に振れば願ったり叶ったりじゃない。
彼はまだ高校生だから諭してあげなきゃならない存在。
でも……唇に目がいって顔を見てしまったら何も言えなくなる。
心がバカ正直になって空いた手が彼の頬に触れてしまうの。
心も身体も嫌だと言ってる。
離れられないって思い知る。
だから首を振って「イヤ」と口からこぼれ落ちてしまう。
ニッと笑って「よく出来ました」と手を引かれエレベーターを降りる。
玄関を開けて中に入ったらまたキスされるのかな?って思ったけど優しく手を引いたままソファーまで。
あれ?意外な展開………
ってなに期待してんのよ…私っ!!
一緒に座って髪を撫でられイチャイチャタイム…?
と思いきや顔が無表情になりサッと身体を離す。
「このまま押し倒したいとこだけどやっぱお仕置きにする」
「えっ…!?」