消えないで、媚薬。
真っすぐ見ながらあれこれ考えていたらツカツカと近付いて来て目線の高さを合わせてきたから身構える。
「本当に覚えてないの?俺、慶太っていうんだけど」
「ケイタ…?」
ますますわからん…!
知り合いに居ないよ〜!
ヤバイ、もしかしてこれナンパ!?
高校生が!?
こんなくたびれた24歳の私に!?
童顔でもないし年相応の顔だよ?
「アハハ、何て顔してんの?ほら、もっと俺のこと見て?思い出さない?」
いや、さっきから凝視してますがさっぱり……
「え〜仕方ないなぁ、じゃあ教えてあげる。出逢いは1週間前、カホさんから俺にキスしてきたんだけど?」
顔面蒼白………はぁ!?
んな訳ないでしょ!?
いくら何でも立場わきまえてるわよ!
保護者の目もあるんだからそんなこと……っ。
「あっ…!」
一瞬脳裏に蘇る。
1週間前って言ったら………
「あ、思い出してくれた?カホさん」って声も何となく………
「とっても熱い夜だったよね」
「や、やめて……嘘でしょ?あの時の…?」
「あの日のカホさん最高だったよ?」
嘘…………
本当に彼なの……!?
そういえば寝顔しか見てないけどこんな顔立ちだったような……!?
サーッと血の気が引いていく。
どうしよう……
何か打開策はないの!?
じ、示談とか!?
覚えてないのに何が示談なのよ!
真っ青な私とは180度違うキラースマイルな彼。
「昼間はとっても可愛らしい保育士さんなんだね?更にギャップ萌えなんだけど?あの日は凄く大胆だったから…想像つかなかった」
「あの、人違いじゃないですか?1週間前って私、研修で京都に居ましたから」