消えないで、媚薬。





「はい、あーん……」




「いや、慶太……自分で食べれるから」




「ダメだよ、病人なんだから」




「でもそれ、まだ絶対熱いし……」




「フゥフゥしたよ?もしかして香帆さん猫舌なの?」




「うん……」




「可愛い……じゃあこれも」




「口移しはいい…!!」




「え〜?なんで?」




「大丈夫、自分でフゥフゥするから」




ジーッと見られながらレンゲのお粥に息を吹きかける。
クスクス笑われながら後ろに回られてハグされるのは想定内だった訳で。
すぐくっつきたがるのよね。
でも今は食欲が先。




「熱っ…!」




「あんなにフゥフゥしたのにまだ熱いの?香帆さん面白い…」




慶太がくっつくから身体も何か熱い……
抱きしめられてる手を解いて化粧ポーチに手を伸ばす。
ヘアゴムを取り出し無造作にアップヘアにした。
もう一度「いただきます」して口に運ぶ。




「あ……美味しい」




「そ?良かった」




慶太が作ってくれた卵がゆ。
本気で美味しいかも。
胃に優しく溶け込んでいく。
こういうの沁みるなぁ。




グゥ…………




ん?今の私のお腹じゃないよね?
後ろを振り返ったら真っ赤な顔した慶太が「ごめん…」って。
そうか、そうだよね。
慶太だってお腹すくよね。
でも、今はコレしかない……




「あ……出前取ろうか?ごめん、今何もなくて」




「いや、いいよ」




「でもお腹……」




ストン…と肩に頭を乗せてくる。
急に密着してくるからいつも戸惑う。
柔らかな髪が頬をくすぐる。
実のところを言うと、この髪の匂いが好きだったりする……
何のシャンプー使ってんだろう?






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