ラヴシークレットルーム Ⅲ お医者さんとの秘密な溺愛生活


心の中では
要領よくできない自分自身に
嫌気がさしているのに

森村がくれたラストチャンスとやらを
無駄にしないように
俺は最大限強がった


そして森村は
伶菜の手をそっと放し、彼女の長い髪をわざとぐしゃぐしゃにした後
一瞬、こちらに鋭い視線を向けてからこの場から立ち去った。

”お前が絶対になんとかしろ”
と言わんがかりの視線を投げかけて。


俺らのやりとりを見届けていたせいなのか、その場にしゃがみこんでしまった伶菜。
その姿はあまりにも小さく、壊れそうなガラス細工みたいにも見えて。



「ナオフミさん・・」

『・・・・・・・・』


俺はそんな彼女を立ち上がらせながら抱きしめた。


「・・・ここで、は・・・ちょっと・・」


病院の廊下という公共の場所
しかも、江草さんという病院の風紀を守ろうとする人の前で
俺の胸の中で小さく躊躇った彼女の声にも気をとめずに。


「日詠先生、アナタも・・・高梨さんと関係が・・・」

彼女を脅かしかねないモノから守れるように強く抱きしめた。


彼女が壊れそうなぐらい
強く強く抱きしめた。



キミを守れるのは
俺じゃなきゃいけない

なによりもキミが必要な
この俺じゃなきゃ・・・・



『俺もじゃないです。』

「日詠先生・・・・?」


目を見開いた江草さん。



『俺だけです。彼女と・・・高梨さんと関係があるのは・・』

「どういうことですか?日詠先生」


俺にそう問いかける瞳は鋭さを増していて


『高梨さんのコトを知るのは・・・・俺だけでいいです。』


彼女を庇うことをしなかった俺はこの時
彼女の上司でいることを辞めた。



たったひとりの
彼女の傷ついた心をそっと包み込める男になるために・・


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