お前は、俺のもの。

会場がとても広い。
カフェとしてオープンするのだから、テーブルや椅子を置くとまた違って見えるだろう。天井が高いから開放感があり、壁からのスポットライトと天井からのたくさんのペンダントライトのおかげで会場全体が明るく保たれていた。

カフェの店員さんから飲み物をいただく。
白のスパークリングワインは甘くて飲みやすい。
鬼課長の手にある飲み物を見て、「それは何ですか?」と聞いてみる。

「ジンジャーエール」

そうだった。彼は車の運転があるからお酒は飲めなかった。
「すみません。私だけ…」
と、飲みかけのグラスを近くのスタッフさんに返そうとした。
グラスがスッと長い指で持ち上げられた。
「凪は飲んでいればいい。帰りは送ってやるから」
そう言われて、グラスが私の手に再び収まっていった。

「凪、こっち」
と、鬼課長に呼ばれてついていくと、会場の一角に料理が並ぶバイキングビュッフェが見えた。
一列にセットされたテーブルの上には、華やかで美味しそうな料理がズラリと並んでいる。
「お、美味しそうっ!」
私の両目は既にどの料理から食べようか目移りしている。
立食形式だがビュッフェの隅には丸テーブルがいくつか置かれており、料理を置いて食べることが出来そうだ。

すっかり食べる気満々でテンションを上げていると、私の頬を鬼課長が指でそっと触れた。見上げると、彼がじっと私を見ている。
──なっ、何?いきなりでドキッとしたんですけどっ。
心拍数が上がっていく私に、
「少し挨拶をしてくる。ここで大人しく食べて待っていろ」
と鬼課長は言い残して、人の群れの中へと入って行った。

私は彼の指が触れた頬の熱を意識しながら、ビュッフェへと向かった。
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