お前は、俺のもの。
お皿にローストビーフとサラダを取り分けて、空いている丸テーブルで食べ始める。
──ローストビーフ、柔らかくて美味しいっ!
鴨のコンフィ、ムール貝のワイン蒸し、そして店員さんから魚介類のブイヤベースをいただく。
「んーーっ、最高っ!」
大声を必死に我慢して、味を噛みしめて小声で精一杯唸る。一緒に持ってきた薄くスライスしたパンを、こっそりブイヤベースに浸して食べれみる。
──はははあああぁぁぁ。幸せだぁ。
頭の中は、小鳥のさえずるお花畑だ。
「お一人ですか」
鴨のコンフィを口を開けて食べようとすると、横から話しかけられる。
口を開けたまま見上げると、私と同年代くらいの紺色のスーツを着た男性が、赤い液体の入ったワイングラスを片手に私を見ていた。髪は短髪で清潔そうな感じだが、目の下が赤くて少し酔っているようだ。
彼は私のフォークにある鴨肉を見て、
「それ、美味しい?」
と聞いてきた。
「…はい、美味しいです」
私は返事をして、少しずつ男性との距離をとった。
しかし、彼は一歩また一歩と私との間を縮めてくる。
「それ、一口ちょうだい」
「え?」
私はここから離れる口実を作ろうと思い、
「じゃあ、あなたの料理を貰ってきます」
と、お皿を持ったまま踵を返そうとした。
がしっ。
ハンドバッグを持つ腕を掴まれた。
──ひぃっ。
内心叫んで男性を見ると、その目はすっかり据わってしまっている。そして、
「どこ行くんだよ。俺は、それが食いたいんだよ」
と命令されるように言われて、怖くて体が震え出す。
腕を掴む手は力が入って、腕がギリギリと痛む。
「あのっ、痛い…」
と耐えられず声をあげようとした。