お前は、俺のもの。

車に乗ろうとする鬼課長を引き止める。

「一ノ瀬課長っ。い、今の明後日迎えに来るって、どういう…」

私は急いで彼の腕を掴んだ。
見上げる私と、振り向いて私を見下ろす鬼課長。視線が絡むだけで、緊張してドキドキする。

「夜遅いんだから騒ぐな。言葉のとおりだ。お前の親に嘘を言う気はない」
「だからって、私の都合も聞かないで…」
「都合、ないだろ?」
「あ…まぁ、ないですけど。てか、そうじゃなくてっ」
乗せられてオロオロする私に、淡々と答える鬼。

「もうっ」と彼の勝手さにムスッと頬を膨らますと、大きな手が頬を包んだ。その逆三角形の瞳は、私を映す。

「これ以上、悪い虫が寄ってきたら困るから」

──え。

ポケッと開いた口から抜けていく空気。
一瞬、彼の瞳が揺れたのも見逃さないくらい、しばらく見つめあっていた気がする。


「凪、お前を俺のものにすると決めた」

美しい鬼は私の頬に手を当てたまま、片方の手で私の肩をゆっくりと引き寄せた。

額にそっとキスを落とした彼の唇が、こんなに自分を酔わすなんて、思いもしなかった……。

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