お前は、俺のもの。
車はコンビニの駐車場へと入っていく。
鬼課長は車を停めると、私へ顔を向けた。その表情は、両目を吊り上げて不機嫌だ。
鬼の声は低く静かだが、悲しそうな気がした。
「じゃあ、お前のそのお人好しに百歩譲って、俺がこれから毎日お前の家の家族として飯を食うことにしよう。お前の家族は大喜びだ。だが…」
鬼は黙って聞く私を助手席のシートから剥がすように、両腕を伸ばして私を抱きしめた。
「そのお人好しは、俺の理想は叶えてくれないのか」
「一ノ瀬課長の理想の食卓…?」
仄かなムスクの香りに包まれた腕の中で、私は彼の胸の規則正しい心臓の音を聞きながら呟く。
──一ノ瀬課長の理想は、家族みんなで食事をすること…?
私は顔を上げて、鬼課長を見た。
「俺の理想は、食事だろうと何だろうと」
低い声が心地よく耳元で囁いて、撫で合う頬と頬が気持ちよくて、自然と瞼が閉じていく。
「お前の心と体が、いつでも触れられること」
体の力が抜けそうな甘い言葉と吐息が、唇に重なる。
鬼の牙が、ゆっくりと唇を甘く噛んでいく。
もっと、唇を噛まれたいと、欲が生まれた。