お前は、俺のもの。
「…え。ここで、寝るんですか」
お風呂を出ると鬼課長からミネラルウォーターのペットボトルを渡され、連れてこられたのは大きなベッドが置かれた部屋だった。
ベッドの他には全身が映るスタンドミラーと一人用のソファとローテーブル。黒とダークブラウンを基調とした男性らしい部屋だった。
サイドテーブルのスタンドライトから柔らかな灯りが、黒いシーツを照らしていた。
「そうだ。ほら、寝るぞ」
鬼課長は私の言い訳は聞かないとばかりに、肌布団をめくりベッドに入ろうとする。
──いっ、一緒に寝るのは…。
さすがの私も戸惑う。
「私は、リビングのソファで大丈夫ですので」
と、踵を返した。
手首が、掴まれる。
「一ノ瀬課長」
手首に触れる大きな手の部分が、熱を宿す。
整った顔の、その瞳から逸らせない視線に、脈打つ心臓も速くなっていく。
「凪」
静かな空間の中で、彼の宥めるような優しく呼ぶ自分の名前に、胸が「ドクン」と跳ねた。
掴まれたその手がゆっくりと彼へ近づき、やがて、私の手のひらは彼のシャツの上へと当てられた。
トクッ、トクッ、トクッ…。
速く、しっかりと脈打つ鬼課長の心臓に、びっくりして「え」と声が出た。
私を見る瞳は目尻が下がっていく。
「お前と一緒に寝る。それだけのことなのに、ガラにもなくこんなに緊張している」