お前は、俺のもの。

「後ろの人って彼女だったのー?」などと声が聞こえたが、密着している彼に神経が集中して周りを気にする場合ではなかった。

鬼課長と一緒に、一件のお店に入る。
お店の名前はよく見てなかったが、ガラス製品や陶器を扱うお店のようだ。食器類はもちろん、花瓶や置き物、小さな小物やアクセサリーなどを販売しているようだ。

「やあ、一ノ瀬くん。いらっしゃい」

お店のレジにひょっこりと顔を出したのは、ニット帽を被った七十代後半くらいのおじいさんだ。顔にできたたくさんのシワを深くしてニッコリと笑う。
鬼課長は私の肩から手を離すと、彼に向かって軽く頭を下げた。
「お久しぶりです。桐谷さん」
「元気にしてたかね?今日は可愛い娘を連れているね」
と、おじいさんは私に目を向けた。その瞳は穏やかながらも、何か強い眼力があるようにも見えた。
「こ、こんにちは」
私は頭を下げた。
鬼課長は躊躇いなく、私の頭を撫でた。その瞳は、とても優しい。
「僕の部下です。今、頑張って口説いている最中ですよ」
と、恥ずかしいことをサラリと言う。
私は「えっ!」と慌てだし、桐谷さんは目を細めて笑う。

「一ノ瀬くんはいつ来ても無愛想で、尖った針のような雰囲気があったのに。今日の君は、わたあめのように柔らかくて甘い。とても幸せそうだ」
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