お前は、俺のもの。

「…浩太」

目の前に立っていたのは二年前に別れた元カレ、元木浩太だった。彼の腕の中には、水色のベビー服を着た生後数ヶ月の赤ちゃんがいた。顔はよく見えないが、よく眠っているらしい。

「…久しぶり。結婚、したんだね」
「ああ。お前と別れてから付き合った女が俺に尽くしてくれてさ、妊娠したから結婚したんだ」
「そう。よかったね」

─私が浩太に尽くしてなかったことを、指摘されたんだ。

私だって浩太のことを大切に想っていた。だけどあの時期は仕事に骨を埋めるしかなかったのだ。

彼との過去を思い返していると、
「おまたせ。その人、誰?」
と、彼の後ろから女性が現れた。
明るい茶髪を緩く巻いたロングヘア、身体の線が分かるくらいのピッタリとしたTシャツに、スキニージーンズ。アイメイクをしっかり施した大きな瞳にぷっくりとした唇の、細身の女性だ。
浩太が、
「ああ、マサミの前に付き合ってた元カノ」
と、隠すことなく発言する。
私がギョッとしていると、
「あーっ、あたしの前に付き合ってたっていう、浩ちゃんを放置しまくって浮気していた人ね」
と、マサミという女性は、私を目の前にして見下したように言った。

「ちょっと、私、浮気なんてしてないよ」
聞き捨てならない彼女のセリフに、私は浩太を見た。
浩太は呆れ顔で私を見る。
「まあ、そう言われても仕方ないでしょ。実際俺は放置されていたし」

『 お前なんか、信用できねぇよ』
この言葉が頭をよぎる。確かに仕事優先だったあの頃のことについては、私は何も言えずにいた。

「もう、別にいいんじゃない?おかげであたしたちは上手くいってるんだし」
と、まるで勝ち誇ったように口角を上げた。
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