お前は、俺のもの。
加瀬部長は顔を上げて俺を見た。
シルバフレームのメガネが似合う、深みの色気を放つこの男は、同性の俺でもカッコイイと思う。
「お前が満島を守りたい気持ちはわかる。だが、一人で無理な時は俺や斉木を頼ってもいいと思っている。俺たちは満島の上司だし、それに「姫」の大事な先輩だしな。斉木も満島の同期なんだ。悪いようにはしないさ」
と、加瀬部長の表情は柔らかい。
「気遣いは有難いですが、俺の私情のことだし…」
と遠慮していると、彼に「気にするな」と片付けられた。
「一ノ瀬、満島は俺が今まで見てきた事務員の中で一番の苦労人だ。立て続けに辞めていく先輩たちの煽りを受けて、全ての営業事務を数ヶ月間、一人でやってきたやつだ。だから今まで苦労した分だけ、お前の手で満島に新しいものを見せてやってくれ」
加瀬部長の言葉が重く伸し掛る。
「満島を泣かせるなよ」
──当たり前だ。