お前は、俺のもの。

色っぽい空気が一変、冷たい空気の漂う中で、私は鬼課長を目の前にしてオロオロするばかりだ。

「漢字は書けるんです、漢字は。でも読み方が…見慣れない漢字だったので」

「……」

「沈黙」という名の空気に凍えそうだ。

──やはり、彼氏の名前が読めないというカミングアウトは、彼女失格かも。

私は彼の次の言葉が怖くて、体を固くして両目をギュッと閉じた。

クスクスクス。
暗闇の中で、鬼が笑っている。その声が大きくなっていく。そして「あははっ!」と大声で笑いだした。

「なるほどな。どおりでお前の態度が腑に落ちなかったし、おかしいと思ったんだ。やっとこれで合点がいった。そっか…クッ、クッ」

目の前で笑う鬼に、私は首を傾げる。
「あの?」
声をかけると、鬼は私を抱き寄せる。彼の胸から少し速い脈打つ音が聞こえると、私の脈もドキドキと速くなっていきそうだ。
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