お前は、俺のもの。
彼はもう一度、加瀬部長を見た。
「これから長野まで行ってきます。商品を引き取ってから直帰します」
「長野か。遠いな」
「あのカフェの佐藤さんから知り合いの工房を紹介してもらったんですよ。あれだけは、どうしても手に入れたいので」
二人の会話に、周りも気にして見守る。
「台風が近づいている。一人で平気か?」
「大丈夫です」
会話が終わり、鬼課長は振り向いて河野くんへ顔を向けた。やはり「見つめる」というより「睨む」という顔だろう。
「河野。この商品の発注は俺個人が契約したもので、満島にも話していないことだ。そんな何も知らない満島が、どうやって商品のキャンセルができる?」
鋭い言葉が、事務所の社員たちをしんっと、静まらせる。
河野くんも目を開いて一瞬驚いていたが、すぐに「ぐっ」と言葉を詰まらせ、口を歪ませて渋い顔をした。
鬼課長が事務所を出ていく。
「……」
なんだか、自分だけが蚊帳の外にいるような気分だった。
──納得できない。鬼課長にいろいろ聞きたいのに!