お前は、俺のもの。
「…どうして、ついてきたんだ?」
雨風が激しくなっていく高速道路を走る車の中で、鬼は大きなため息を吐いた。
駐車場で私が鬼課長の車に乗り込んだ時、彼は驚いて「帰れ」と言ったが、
「私も一緒に行きます」
と、シートベルトをして降りる意思がないことを主張した。
彼は「まったく」と、ブツブツ文句を言っていたが、私を無理矢理降ろすことなく車を走らせた。
今は高速道路の上だ。さすがに「ここで降りろ」とは言わないだろう。
私はハンドルを握って運転する彼の横顔を見つめた。
「…私だけ、何も知らないことが嫌だったからです。一ノ瀬課長がこっそり何かをしていたのは知っていましたが、個人で発注したものがあったなんて。教えてくれたらよかったじゃないですかっ」
「商品が届いたら教えようと思ったんだ。まさか、こんなことになるとは思っていなかった」
「一体、何を発注してキャンセルされたんですか」
「……」
彼は閉口して、運転に集中した。
口調からして怒っているというより、困惑しているように見える。きっと鬼課長もこの状況をしっかり把握出来ていないかもしれない、と思った。それは私もまた同じだった。