お前は、俺のもの。

市村係長は川添穂香に一目惚れした。
「これが抑の事の発端だったんだと思う」と、市村係長は言う。彼は仕事もそうだが、一度執着すると完璧に終えるまで猛進する性格らしい。恋愛も例外ではなかった。
どうしたら川添穂香は自分に振り向いてくれるのか。
どうしたら川添穂香が自分を愛してくれるのか。

そんな苦悩の中、川添穂香は御曹司の一ノ瀬梛と恋人になった。
それでも市村係長は彼女を諦められず、「せめて友人の一人として付き合えたら」と未練を隠して近づいた。結果、女の扱いが慣れている市村係長は川添穂香と友人になり、気軽に食事に誘い合える仲にまで進歩した。

川添穂香は市村係長に少しずつ気を許していく頃には、彼女は一ノ瀬梛と別れたと噂されていた。同時に同僚からも「態度が悪い」と陰口が聞こえてきたときだった。
市村係長はストレスが溜まっているのだろう、と軽い気持ちで飲みに誘うようになった。

「一ノ瀬梛と、ヨリを戻したい」

お酒で酔うと、いつもの決まり文句が始まる。
「一ノ瀬梛が、好きなの。抱きしめられて、キスしたいの…」

そう言われて酔い潰れる彼女を抱えて送っていく度に、市村係長の心中は一ノ瀬梛への煮え滾る嫉妬と悔しさが募っていった。

「酔っ払った穂香を記憶がはっきりする朝まで抱き潰してやろうかと、何度思ったか。僕しか反応しない体にしてやろうかと、何度思ったか。でも、あの寝顔を見ると…できなかった…」

市村係長は川添穂香に本気だった。

そして「一ノ瀬課長に営業事務の満島凪がアシスタントについた」と、食堂で不機嫌に話す小堺るみを見かける川添穂香。

「穂香は小堺さんに近づいて、上手く一ノ瀬課長と満島さんの情報を聞き出してたよ。満島さんに嫉妬したのも、割と早い時期だったと思う。小堺さんが「満島さんがムカつく」と言えば穂香は面白そうにアドバイスするんだ」

『じゃあ、本人に言えないならロッカーに「ムカつく」ってメモしたらどう?きっとビックリして会社に来なくなるかも?ふふっ』
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