お前は、俺のもの。
しんっ、と静寂の部屋の中、各々が鬼課長の話に耳を傾けている。
腕を組み目を閉じて難しい顔をしている、机に肘をつき顎に手を当てて考えている、聞いたことを書き記したものを見つめて大きく頷く。
さすが選ばれた上層部だけに、どの眼力も強い。ただ一人、春川専務は複雑な表情をしていた。
「しかし市村係長の真相という、これまでの全貌は全て川添穂香の想定内だった。彼女は本当に賢い人で、ちょいちょいその人の今欲しい言葉を投げかけるだけで思いどおりにするんですから。
川添穂香は、全て計算していたんですよ」
鬼課長の言葉に、みんなが川添穂香に注目する。
本人は瞬きはしていても、さっきからピクリとも動いていない。
鬼課長も彼女へ視線を向けた。
「川添さんが強かな女性だということは、俺自身、身をもって知っています。彼女は全て誰がどう動くか知っていて、最後に自分で手を下したんです」
鬼課長は川添穂香の立つ証言席へ近づく。
「小堺が入れ知恵どおりに動いて、どうでしたか?市村係長を焦らして縋って思いどおりに動いたのを見て、どうでしたか?」
川添穂香の横に立つ、鬼。口元は緩めているのに、その逆三角形の目は相手を射殺すほど睨んでいる。
口を開かない彼女に、鬼は問いかけ続ける。
「満島の名前を騙り、俺の発注した商品をキャンセルの電話をした時の気持ちは、どうでしたか?」
川添穂香はようやく、ゆっくりと顔を上げて鬼へ顔を向けた。瞼を大きく開き、満面の笑みを見せて言った。
「これで梛が私のところに戻ってくると思って、最高の達成感を味わったわ」