お前は、俺のもの。

クスクスと小さく声を立てて笑う川添穂香に、鬼の睨む目には青白い眼光が走る。

「では、水族館で満島凪を引っ張り落としたときの気持ちは、どうでしたか?」

笑っていた川添穂香の声がピタリと止まり、視線を鬼課長へ向ける。同時に上層部がざわっと声が交差する。
彼女はジロッと鬼課長を睨み、
「わたしが満島さんを落としたという証拠でもあるの?」
と、声を低くして聞き返した。

鬼課長は「今は便利なものがあるからな」と、ジャケットの内ポケットからスマホを取りだした。
「関口に少し見せてもらいました。メッセージアプリの川添さんのタイムラインに、こんなのを見つけたから送ってもらったんです」
と、上層部へそのスマホの画面を見せた。

「日付に注目してください。この日、俺と満島もその水族館にいました」
川添さんのタイムラインには、「従姉妹たちと水族館です」と呟きがあり、川添さんを含む四人の女性たちが写っている。背後の大きな水槽には、見覚えのあるマンボウが泳いでいた。

川添穂香がふっと笑った。
「その程度では、私が引っ張り落とした証拠にはならないわよ」
「でしょうね。だから、わざわざ水族館で探しました。防犯カメラを」
と、今度はタブレットを持ち上げた。

「見つけましたよ。川添さんが満島さんを引っ張り落とした後の映像です」

画面には外を歩くセミロングの髪の、ワンピース姿の女性が映っていた。画素が低いため顔がはっきりと見えないが、体型や顔の輪郭で川添穂香だと意見が一致する。

すると、それに反対する人物が一人。

「どうしてその画像が階段から引っ張り落とした証拠になるのよ!」

その直後に、彼女はハッと口を押さえる。
鬼課長はギラリと睨み、その顔を見据えた。

「では、その時の状況を詳しく話していただきましょうか。「階段で」どのように満島を引っ張り落としたのか」

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