お前は、俺のもの。

『小堺の話では、お前は営業企画に来ていない、と聞いたが?』
「ええっ?」
思わず声を上げてしまう私。
「そんなはずないです。送り状のコピーを営業企画に持って行ってから配送部に行ったんです」
『ああ。たった今、配送部に確認が取れたから大丈夫だ。だが…どちらかが嘘を吐いている』

「そんな」と、ポツリと声が出てしまう。

私、信用されてない?

頭の奥から蘇る、苦くて辛い記憶。

「お前なんか、信用できねぇよ」

呼吸が苦しくなる。
もう、ここから逃げ出したい。
「私のことが信用できないなら、それでも結構です。加瀬部長に一ノ瀬課長の助手を他の人と代わって頂くように話しますので」
と自分でも驚くほどの低い声を放ち、鬼課長の返事を待たずに通話を切った。

明日から、いつもの日常が帰ってくる。

そう思うと脱力感を覚え、その場に座り込んでしまった。

「お姉ちゃん、大丈夫?」
気になったのか、見に来たのは妹の春奈だった。

『どちらかが嘘を吐いている』

この言葉がずっと頭の中でリフレインして気分が悪くなる。
夕食を食べる気になれず部屋に閉じ込もり、着替えることもなくベッドに倒れ込む。

明日は休日。
目を閉じ、そのまま泥のように眠りに落ちていった。
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