お前は、俺のもの。

「小堺には反省文を書かせて、終業後の一時間を資料保管庫の整理をさせることにした。期間は一週間だ」

この暑い時期に冷房もない資料保管庫の整理を1時間も?
八階にある資料保管庫は営業部のエリアほどではないが、スチール棚がズラリと並ぶ紙の匂いの漂う部屋である。時々、社員の誰かが空気の入れ替えに窓を開けることはあるが、小窓なため涼しい風を部屋全体に取り込むほどの力量はない。

「あの、一ノ瀬課長。エアコンもない資料保管庫の整理を一時間というのは厳しいのでは…」
と、鬼課長の顔色を伺うように聞いてみた。
すると彼の逆三角形の目がピクリと動く。

「自分をあんな目にあわせた小堺の罰を軽くしろ、というのか。ここまできたら筋金入りのお人好しだな」
と、呆れている。
私は彼女が反省文を書いて反省したのなら、もう十分ではないか、と思うのだ。しかし鬼課長の顔を立てるのであれば…。

「せめてトイレ掃除一週間とか」
「そうか、トイレ掃除も上乗せして欲しいのか。わかった、そうしよう」
「そうじゃなくてっ」
焦って、鬼課長に声を上げた。
それもすぐに遮られてしまう。
「満島」
一言、名前を呼ばれただけで、全身がひんやりとした空気が囲う。

「俺は人に対する優しさが悪い事だと思っていない。だけど優しさだけを人に与え続けるのは、相手の成長の妨げになることだってあるし、自分もただのお人好しに成り下がる原因にもなると思う」
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