お前は、俺のもの。

「アホか。そんなデカい声の独り言なんて、聞いたことねぇよ」
と、言われてしまう。その割には、彼は手を口に当てて、何やら考えている仕草をする。
「ん…そうだな。そうだ、これは見取りのスケッチパースだ。参考にして見取りにどんなインテリアが使われているか、お前も把握しておいてくれ。それから、ファミリータイプのアイデアがあるなら意見を聞きたいから、こっちの図面に記入しておいて欲しい。期間は3日くらいでできるか?」
時間的には急な仕事の依頼がなければ大丈夫だろう。
「はい、頑張ってみます。しかし、私はセンスが良くないかも…」
と、スケッチパースに描かれた素敵な大人の空間に目を奪われてしまい、自信を失ってしまいそうだ。

「そんなの、お前のあの服装を見たら納得したから」

彼のククッと小さく笑う顔に、私はハッと思い出した。

そ、そうだった!
鬼課長が自宅に来たあの日、私はくたくたのシャツと毛玉のついたパンツ姿だったことを。

──もっと、ちゃんとした服を着ておけばよかった…。

ガックリと肩を落とす私に、鬼課長は私の頭をポンと軽く撫でていく。
「まあ、センスはどうあれ、発想は悪くない。お前なら大丈夫だろう。デスクは俺のとこ使っていいから」
と、ファイルを持って事務所を出ていった。
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