お前は、俺のもの。

「まったく。「センスはどうあれ」って、結局私のセンスは信用していないじゃない」
と、口を尖らせる私に、気づくと綾乃がデスクでニヤニヤと笑って見ている。
「凪さん、なんだかんだ言って、一ノ瀬課長といいコンビじゃないですか」
「ええっ?綾乃ちゃん、それはないないっ」
と、綾乃に慌てて否定した私だけど、中身は鬼課長に対して心拍数が上昇中だ。
仕事中だから、何とか平静を保とうと必死なのだ。

「凪さん、顔が赤いですよ」
「もうっ、からかわないでよ」
綾乃には、かなわない。

鬼課長の図面に書き込まれた、モデルルームのイノベーションに使われる材料を調べ始めて、鬼課長のデスクに積み上がっていくカタログや資料のサンプル。
さすがに夕方になってくると、集中力が切れて目がショボショボし始めた。カフェオレでも買おうと、事務所を出てエレベーターホール横の自販機に近づいた時だった。

「今日のご飯、楽しみにしてるんだから忘れないでよ」

その声で、咄嗟に体を壁に寄せた。
秘書課の川添穂香だ。
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