お前は、俺のもの。

「あの子たちがあなたと市村係長のファンだったのは知らなかったけど、最近いろいろ迷惑かけているからお詫びしたいって、私に相談に来たのよ。私も久しぶりにあなたとご飯したいと思っていたから都合がいいと思って、市村係長にも声をかけたの。お店はメールしてあるからわかるわよね?私の名前で予約してあるから、みんなで楽しみましょ?」
「……」

彼女は誰と話しているのだろう。相手は男性のようだけど、よく聞こえない。

──このまま知らないフリして自販機まで歩いていこうか。

「こんなところで盗み聞きか?」
「へ?」
見上げれば、冷たい視線を送ってくる、鬼。
川添穂香の相手は、鬼だったのか!
逆三角形の目に睨まれて、ガチッと凍る私。
──こ、怖いっ。
「あの、その」と言いながらオロオロしていると手から百円玉が二枚、音を立てて落ちて転がってしまう。
「あっ」
一枚ずつ違う方へ転がる百円玉を追いかけて拾う。鬼課長がもう一枚を拾ってくれた。
「ありがとうございました。カフェオレを買おうと思って…」
「ん」
差し出した鬼課長の手には、百円玉と一緒にカフェオレの缶が握られていた。
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