お前は、俺のもの。
またしても、「それ」は突然やってきた。
「凪さん、どうしても終わらないんです…」
終業時刻の一時間前。
あの一件から大人しく仕事をしている由奈が、眉を八の字にして話しかけてきた。
彼女の今日は、月締めの売上集計作業をしているはずだ。今日の売上のデータ入力をすれば、この一ヶ月の納品書と請求書を顧客別にプリントアウトされる。それを加瀬部長に捺印を貰うために提出して、明日には先方へ郵送することができる。
「今日のデータ入力多いの?」
「いえ。データ入力もそうなんですが、頼まれた見積書がまだ五件も残っていて…」
「…え?」
私は由奈のデスクを覗いた。
案の定、綾乃も険しい顔を浮かべて由奈のデスクにやってきた。
とにかく、今日の仕事を優先しなければならない。
「由奈ちゃん、今日の作業予定を教えてくれる?どれが終わったものかをチェックしよう」
「今日の予定は、パソコンに貼ってあるもの全部です」
と、彼女はパソコン画面横の上から何枚か貼られた付箋を見た。
「月締め売上集計」と書いたものや加瀬部長と他数件の見積書作成、カタログ送付といった内容だ。パッと見た感じでは勤務時間内に本人の通常業務をプラスしても十分こなせる作業量だと思った。