お前は、俺のもの。
ぞくり。
私の前に立つ男から、再度感じる氷点下の空気に、ブルッと身震いした。
鬼が、怒っている。
後ろ姿の鬼は、どんな顔をしているのかわからない。
「お前、何か勘違いしているな」
その低い声からは、漂うオーラと同じ怒気を感じた。
私の位置から見えた由奈の顔は、真っ青になって怯えて鬼課長を見つめていた。
「俺が小堺をイベントに参加させるのは、他の誰を呼ぶか考えるのが面倒だったからだ。それなら同じ部署の小堺にしておけばいいと思ったまでだ。他意は全くない」
──これが、鬼の本音…。
ある意味修羅場のここで、私が一緒にいていいのかと迷い、鬼の横からそっと由奈たちを覗く。二人は怯えたまま震え上がっている。
小堺るみは青白い顔で鬼を見上げている。
「そんな…私は課長に信頼されていると思っていたのに」
「ああ。仕事に関しては問題ない。それ以外の私情丸出しの世話焼きには、正直迷惑している」
「世話焼きって…私はただ、課長の仕事のしやすいように…」
「頼んでもいない弁当を作ってきたり、夕食を作ると言ってストーカーのように俺のマンションの前でウロウロすることが?」
「課長の栄養管理だって、仕事のうちだと思っています!」
押し問答の果てに、小堺るみの言い放つ声に、鬼の「クスリ」と笑う声が聞こえた。