希望の華


「副長。今失礼してもよろしいでしょうか。」

「ああ、斎藤。ちょうどいいところに。入れ。」



目の前の男がそう言うと、ふすまが開き背の高いすらっとした男が入ってきた。
男は私を見て、お前起きたのか、といった。

なぜ彼はこの状況には何とも言わないの。
私がこうやって刀を突き付けられているのには何も思わないの。



でもおかげでここにいる全員の名前がわかった。
土方歳三、沖田総司、斎藤一。



「お前、何か思い出せたか。」

「有栖。」



私は小さく本名を名乗った。
ここはこれで乗り越えるしかない。



「あ?」

「私の名前。」



私の言葉に男は、ああ、と言った。
どこまで説明すれば納得してくれるだろうか。



「それで、何者か。説明してくれるな?」

「名前は有栖、江戸出身の数えで歳は十八。
趣味は茶道、特技は剣道。

独自の技術を持っている名もない道場の娘。」


まあ、嘘じゃない。
隠しているだけ。



「あのさ。さっきから聞いてれば、君は何なの。
こっちは僕がその気になれば簡単に君の首は飛ぶ。

僕らが聞いてるのは、君が忍かってこと。
あの動きは忍にしか不可能なわけ。
いくら君が道場の娘と言えど、あの動きは熟練された忍の技以外何ものでもない。

わかる?僕の言いたいこと。」


やっぱりごまかしは利かないか。
私は吐きかけたため息を飲み込んだ。

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