希望の華
「“神楽”。“神楽”を出せ。私の刀。」
さすがにたじろいたのか、近藤さんの前だからか、素直に神楽を渡してくれた。
受け取った神楽を握り刀へと形を変えた。
土方の文机の横に積まれた紙と筆を取り、文字を書く。
神楽仕以華 捧於誠焉 無不華従於其誠 誓以之
――神楽 華ヲ以テ仕フ 誠二捧グ 華 其誠二従ワザルナシ 之ヲ以テ誓フ
「このような形での誓いになってしまい申し訳ありません。
ただ、私の気持ちは確かであること、忘れないでください。」
私は神楽を鞘から抜き、自分の手のひらを切る。
「お、おい!」
「何をしてるんだ、危ないだろ!」
「いえ。これが儀式、なんです。」
私は紙に自分の血をたらす。
その血が滲み、墨と混ざるのを見ていた。
二人も黙ってその様子を見ていてくれた。
鮮血が最後の文字までたどるのを見て、私は近藤さんの目の前に差し出す。
「この紙に火をつけてください。」
私は文机のろうそくを取り、差し出した。
近藤さんによって火をつけられた紙は本来ならありえないスピードで燃え尽きた。
「不思議なものだな。」
「ええ。私の一族の血はそのようにできています。」
遠い先祖が薬漬けになって手に入れたものらしい。