Bloody wolf
「及川君、張り切ってるね」

千里が笑う。

「当たり前。体育祭で篠宮さんにいいとこ見せたいし」

白い歯を見せて爽やかに笑う及川君は、ちょっと眩しい。

私には彼みたいな熱さはないもの。


何に対しても冷めてしまう。

まぁ、そんな自分が嫌いじゃないからいいけど。


「体育祭を頑張っても、響が及川君を受け入れるとは思わないけどね」

フフフと笑いながら毒を吐く千里。

本人がそれを自覚して言ってない辺りが、また怖い。


「委員長~そりゃないよぉ」

うん、その顔になるよね。

ガックリ来たままの及川君は友達に呼ばれて立ち去っていく。


確かに千里の言う通りなんだよね。

及川君の背中にごめんね、無理と思いながら見送った。


「さすが千里、撃退してくれてありがと」

「えっ?」

分かってない顔で首を傾げる。


「良いの良いの、結果オーライ」

ポンポンと千里の肩を叩いた私を彼女は不思議な顔で見ていた。



体育祭は、順調に進む。

何処が勝ってるのか分かるように五色のプレートに点数が加算されていく。


勝ち負けなんてどうだっていいけど、優勝チームには学食の食券1ヶ月分が貰えるので、ちょっと興味を引かれた。

もちろん、だからと言って私が本気を出す訳じゃないけど。


赤組の皆さん頑張ってぇ~。

他人事の様に思いながら、涼しいテントの日陰で過ごす。


立ち上がって応援に躍起になってる生徒達を見て、これが青春なんだと納得した。


女子生徒達がキャーキャー騒ぎ出すと、必ずと言っていいほど、イケメンが登場する。

そして、男子生徒の野太い声が響く時は可愛い子が出場する。

本当、なんて分かりやすいんだろう。


「響、ちょっと行ってくるね」

千里が立ち上がる。

「あ、そろそろ棒倒しだね」

「うん、次の次」

「頑張ってね」

ひらりと手を振って見送る。

棒倒しなんて激しい競技は、大人しい千里に似合わないなぁ。

委員長だから、人数が足らないところに配置されちゃったのよね。

怪我しないといいんだけど。


体育祭は、体育委員とクラス委員がババ引くんだよね。

種目だって、確か4種目も出ることになってたよ。


1種目しかでないけど、もちろん申し訳ない気持ちになったりはしない。

だって、出たくないんだもん。
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