Bloody wolf
体育祭は順調に進み、お昼を挟んで赤組と青組が接戦で折り返す。

異様な盛り上がりを見せる中、奴等は登場した。


学ランを着た5人が我が物顔で運動場に現れた時には、空気が振動するぐらいの悲鳴が沸き起こった。

午前中に聞いていた黄色い悲鳴なんて比じゃないぐらいに、女子生徒が興奮してる。


あ~面倒臭い。

迷うことなくこちらを目指してる晴成達に、赤組の連中がそわそわし始める。


「響を見に来たの?」

驚いた顔の千里に聞かれた。

「・・・ん」

頷いて溜め息をついた。


学校中の視線を引っ提げてやって来る晴成の瞳は真っ直ぐに私を見てる。

あ、立ち直ってる。


自信に満ち足りたアンバーな瞳が、周囲を飲み込む。

そこに居たのはウルフの総長。

みんなが堂々とした彼らに見惚れる中、とうとう私の居るテントまでやって来た。


キャーキャー騒ぐ女の子達。

あからさまにアピールをする女の子もいて、ウルフの人気を知る。

みんな、目の色変わってるから。


生徒達に緊張が広がる。

そんな中で、私だけが冷静だった。

「響、お前の出番に間に合ったか?」

視線を集めたまま私と側までやって来た晴成は、迷いもなく私に声をかける。

「次だから、もう行くけど」

集合の放送がさっき掛かってたし。


普通に返した私に反応したのは周囲の生徒。

ざわざわと騒がしくなる。


「ふっ・・・そうか」

「ん」

立ち上がって、集合場所へと歩き出す。

それについてくる晴成達に、みんなが驚いたように目を見開く。


ヒソヒソ話す声やチラチラ向けられる視線。

中には妬みを込めた憎悪に歪んだ視線もある。


まったく・・・面倒臭いな。



「響ちゃん、頑張ってね」

光希が愛らしく笑う。

「ちょっとは力入れろよ、響ちゃん」

煩い瑠偉。

「適当にがんばれ」
 
豪らしい応援だ。

「響さんの体操着姿は新鮮ですね」

それ、嫌みなの? 秋道。


「本当に来たんだ」

呆れたように言えば、

「当たり前だろうが」

と晴成がゆるりと口角を上げた。


「そ。て言うか、どこまでついてくるつもり?」

集合場所までついてきて、どうするんだ。


「おお、悪りぃ」

「晴成、俺達は向こうの観覧席で見ましょうか」

「ああ。響、頑張れよ」

秋道の意見に頷いた晴成は、私の頭をポンポンと撫でた。

その瞬間に上がった黄色い悲鳴に、耳を塞ぎたくなった。


本当・・・怠い。
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