Bloody wolf
「じゃあなぁ、頑張れよぉ」
瑠偉、声がでかい。
「響ちゃ~ん、ファイト~」
光希、そんな瞳で見つめてもやる気はないから。
煩い2人を引き連れて晴成達が居なくなると、私に色々聞きたくてそわそわし始める女子生徒。
話しかけられても面倒なので、話しかけてくるなオーラを全開にする。
ちょっと殺気立つくらいにしてれば、話しかけて来ないでしょ。
「あの子、ウルフとどんな関係だろ」
「彼女を応援しに来たみたいだよね」
「晴君の彼女かな?」
聞こえるようにヒソヒソ話すな。
そして、私は晴成の彼女じゃないわよ。
あちこちから無遠慮に向けられる視線と、ヒソヒソ聞こえる声に苛々が募っていく。
あ~ウザい。
集合場所に、私の醸し出すオーラをぶち破って話しかけてくる人がいないことだけが、まだ救いだ。
チクチクと刺さる視線が、本当迷惑だ。
観覧席に向かった5人がアイドル並みに視線を集めながらも、私の方だけ見てること気に入らない様子の、人達はで、般若みたいな顔で睨んでくる。
今の顔を、ぜひとも鏡で見ればいい。
不機嫌オーラが増していく中、私に声をかけてくる人がいた。
「響ちゃん、よっ!」
1学年上の戸田君だ。
「やっとこれで、普通に声をかけられるね」
戸田君の横にいた中平君が笑顔で言う。
「2人も同じ赤組だったんですね」
頭に巻いてるハチマキの色を見て言う。
「おう。俺達も同じ席にいたのに、響ちゃん全く気づいてなかったよな」
と戸田君に言われ、周囲を全く見てなかったと苦笑いする。
「あんまり興味ないんで」
「響ちゃんらしい」
中平君はケラケラ笑う。
「綱の一番後ろから3番目ぐらいなら手を抜いてても問題ねぇよ」
「なるほど、じゃあその位置でお願いします」
戸田君のナイスな情報に感謝した。
私にもってこいの場所じゃないか。
「本当にやる気ないんだね」
「疲れるの嫌いなんですよ」
苦笑いの中平君にそう言って頷いた。
「俺達が前後にいて守るから、適当にパフォーマンスだけしてりゃいいよ」
戸田君はいい人だ。
「あざーす」
軽い返事をしたら、2人とも爆笑した。
いやいや、そこまで笑うほどでも無かったと思うよ。
和やかに会話する私達を周囲が異様な目で見ていたことは、気付かない振りでやり過ごす。
いちいち構ってらんないからね。