Bloody wolf
「響、凄く力抜いてたね」

席に戻った私を千里が苦笑いで出迎えてくれる。


「綱引き楽勝。千里に感謝だよ」

「少しは本気だしてよね」

「嫌だよ、面倒臭い」

「まったく・・・」

呆れ顔の千里に肩を竦める。

周囲は何か聞きたそうにそわそわしてる。

もちろん、目なんて合わせてあげないので、誰一人として話しかけては来ないけど。

話しかけてくるなオーラは持続中。


聞きたくて仕方ないんだろうな、晴成達との関係を。

まぁ、親切に話してあげるほど、私はお人好しじゃないんだよね。



「篠宮さん、ウルフと知り合いなの?」

及川君が顔を強ばらせて聞いてくる。

やっぱりなぁ。

「さぁ、どうかな」

わざわざ周囲に聞かせるつもりはないんだよね。

「大丈夫なの? もしかして、脅されたりしてるんじゃ」

心配そうな顔の及川君は独自の思考を展開してるらしい。


「そんな心配いらないよ」

「・・・でも」

「悪いけど、何も言うつもりはないから」

話は終わりだと告げる。


「篠宮・・・さん」

及川君が何かを言いかけた時、今まで感じたことのない殺意の混じった鋭い視線を感じた。


どこから?

視線を探そうと顔を向ければ、そこには凍り付くような瞳をした晴成が及川君を睨み付けていた。

その視線で誰かを殺せそうだね。


及川君に向かってる視線は明らかな敵意。

ちょっと、どす黒いオーラ出てますけど。

晴成の隣で秋道が苦笑いしてた。

笑ってないで、総長を止めてよ。


「及川君、借り物競争の選手呼ばれてるよ」

さっさと私から離れて。

じゃないと晴成が来ちゃうよ。


「あ、おお、行ってくる」

腑に落ちない顔のまま彼は集合場所へと向かう。

晴成の視線が和らいでホッとする。


素人相手にどんだけ睨むのよ。

まったく、うちの総長さんは短気だね。


「及川君、凄い睨まれてたね」

「あ、気付いてた?」

「あれだけあからさまだったら気付くよ」

千里はやれやれと首を左右に振る。


「晴成って、短気みたい」

初めて知ったけど。

「それ・・・ 多分、響限定じゃないかな」

「へっ? そう?」

「今、ウルフの総長さんがちょっと可哀想に思えた」

薄い笑いを浮かべた千里。

晴成はそんなに可哀想じゃないと思うけどなぁ。
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