Bloody wolf
借り物競争が始まってレースが進んでいく。

紙に書かれた色んな物を借り受ける生徒達を見てると、眠気がやって来た。


女の子達からの視線は相変わらずウザいけど、それを除けば日陰のこの場所は快適だ。

キャーキャー、ワーワーと生徒達が騒ぎながら借り物競争は進んでいく。

上に書かれたお題の中には人なんかも居るらしく、選手に手を引かれて走ってる人もいた。

暑いのにご苦労だね。

完全に他人事の顔で見つめてた。


「ふぁ~眠い」

椅子に座ったまま目を瞑ってみる。

暑いけど、ちょっとだけ眠れそうな気がする。


千里が側にいるから何かあれば起こしてくれるだろうと、意識を遠ざけようとした時だった。

女の子達の悲鳴が間近で聞こえ、こちらに駆け寄ってくる足音がした。


なに? 熱気なのか殺気なのか分からないそれに目を開けた。


「篠宮さん、一緒に来て」

何故か目の前に及川君がいて、私の手を引いて立ち上がらせる。


「はぁ?」

不機嫌な声が出たのは眠いからだ。


「いいから来て。一番になりたいから」

懇願されて仕方なく及川君に手を引かれて走り出す。

眠さでぼんやりしてなければ、絶対に断ってたのに。


「あんまり走りたくない」

と言ったのに、

「ごめん、早く走るね」

笑顔で却下された。


走るスピードを上げた及川君は、私の手を引いてぐんぐんと選手を追い抜いていく。

キャーキャー騒ぐ女子生徒に睨まれ、晴成からとんでもない睨みを受ける。

マジで勘弁してよ。


及川君のスピードに合わせないと足が絡まりそうになるから、仕方なく本気で走った。

不様に転んだりしたくないもん。


私を睨んでる女の子達に笑い者にされるのは冗談じゃない。


千里から後になって聞いたのは、私と及川君は相当なスピードで走ってたと言うこと。

そして、それにスポーツ部の連中が目を輝かせていたって事。



及川君の手に握られてるお題の紙がやたらと気になった。

好きな人なんて書いてたらぶっ飛ばしてやるから!

少しだけ先を行く及川君の背中を睨み付ける。


走ってる途中でチラリと目に入った晴成は秋道に羽交い締めにされていて、ちょっと吹き出しそうになった。


何をやってんの?

運動場の真ん中に乗り込んでなんて来たら、絶交だからね。
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