Bloody wolf
「赤組一年の及川君が一番です。お題を見せてください」

司会者の生徒が及川君に手を差し出す。

ゴールしてやっと解放された私は肩で息をつきながら、お題の発表を待つ。

こんなに本気で走らせたんだから、くだらないお題だったらキレてやる。


「これです」

「及川君のお題はカッコいい女の子。篠宮さんは確かにカッコいい女の子なので、一位です。おめでとう」

司会者の発表に盛り上がる生徒達。

「ありがとうございます」

及川君は司会者から嬉しそうに一位の旗を受け取った。


カッコいい女の子って・・・まぁ好きな人より大分とましだけど。


「篠宮もありがとう。お陰で一位になれた」

嬉しさに満面の笑みを浮かべる及川君。


「ん、別に」

軽く手を振って、テントの方へと向かう。

その間も、敵意の籠った視線があちこちから突き刺さる。

はぁ・・・及川君のせいで悪目立ちした。


とぼとぼと歩きながら、大きな溜め息をつく。

学校中の女子生徒が敵に回った気分だな。

これをなんとか打開しなきゃと思案する。


晴成の機嫌も最高潮に悪そうだし、色々と面倒臭いなぁ。



「お疲れ。やっぱり響は運動神経いいね」

出迎えてくれた千里が嬉しそうに笑う。

「無駄な体力使ったよ」

項垂れる様に椅子に腰を下ろした。


「フフフ、少しゆっくりしてたら。今からクラブ発表だし」

各スポーツクラブのデモストレーションが始まるらしい。

部活名を書いたプラカードを手に持った生徒達が集合場所に集まってた。


「喉乾いたぁ~」

全力だして走ったら喉も乾くよ。


「はい、響ちゃん」

「へっ?」

突然背後からかけられた声と差し出されたペットボトルに目を丸める。


「そんなに驚かなくてもいいのにぃ」

アヒル口で拗ねる光希に、

「何してんの?」

自棄に冷静な声が出た。

「走ったら喉乾くと思って自販機で買ってきたんだよ」

誉めて誉めてって顔で見てくる光希。


「それはどうも」

さらりと言ってペットボトルを受け取った。


「響ちゃんて学校でもクールなんだね」

「いや、そんなつもりはないけど」

「まさにカッコいい女の子だよね」

可愛くウインクされたが、ドキリともしなかった。

私の代わりに、周囲がざわめきたった。
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