Bloody wolf
「で、光希が来た本当の目的は?」

光希を真っ直ぐに見据える。

「フフフ、響ちゃんには敵わないなぁ」

そう言って笑ったあと、光希は私の耳に顔を近づけた。


「さっきの借り物競争で晴成がブチキレててね。響ちゃんを自分の女だって公表するって言い出してる」

「ちょ、はぁ? なに考えてんの、あのバカ」

思わず叫んでしまった私に、色な視線が向けられた。

だいたい、そんな誤報を流されてたまるものか。

私は晴成の彼女じゃない。


「でもね? ほら、さっきので大分と響ちゃんの敵が増えたみたいだし。それを牽制するためにだって」

「・・・・・」

確かに敵は相当増えたけど。

晴成の彼女とか発表されるのは困る。


どうしたらいいのかな?

私の敵を一掃するには・・・・・。


目の前のスポーツ部のデモストレーションを見ながら必死に考えた。

強さをアピール出来れば問題ないよね。


「あ、良いもの見つけたわ」

あるクラブのプレートが目に入る。

白い胴着に身を包んだ男達。

あれって・・・・・そうだよね。


「どうかした?」

私の視線を追うように顔を向けた光希。

「光希、私は自分に降りかかる火の粉は自分で払うよ。晴成にはそう言って。だから、余計なことをしないでねって」

自信たっぷりにゆるりと口角を上げる。


「了解。伝えるね。何をするのか分かんないけど頑張ってね」

ぴょんぴょん跳ねてそう言う光希に、

「面白いもの見せるから期待しててね」

と笑った。


「うん、じゃあね」

頷いた光希は手を振って去っていく。

その方向には、私だけを見据える晴成の姿があって。


そんなに熱い視線を向けられも困る。

悪いけど、晴成の作戦には乗ってあげないからね。


私は私のやり方で敵の戦意を喪失させるよ。
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