Bloody wolf
大きな体の主将は攻撃も大雑把だ。

右を打ち出してからの左、それから中段蹴り。

ワンパターンで、直ぐに動きが読める。


さっきの突きで1ポイント。

だったら、後に2、3発決めてから上段蹴りで吹き飛ばすかなぁ。


もちろん、相手に1ポイントも与えないまま勝つつもりだし。


マンネリな攻撃を交わして、中段、下段と蹴りを入れる。

もちろんこれは隙を誘うためのフェイク。


私の蹴りを往なして、右の突きを打ってきた主将の懐に一気に飛び込んで上段突きをお見舞いする。

さすがに喉元は寸止めした。

「有効(1点)」

2本目が入る。

主将が悔しそうに顔を歪めて、付きの押収をしてくる。


重いパンチは当たったら大変だけど、見切れたら怖くないんだよね。

主将のパンチを交わしながら、3本目の中段付きを入れた。

「有効(1点)」

これで4点目。最初の付きが技あり(2点)だったからね。

私の防戦一方だった戦いは、私の独壇場へと変わる。


やんやと囃し立てる生徒達。

ちょっとしたショータイムのように盛り上がってる。


でも、私は既にこの状況が面倒くさくなっていた。

こう言う所がダメなんだよねぇ、と思いつつ。


最後の蹴りを放つべく、主将の隙を誘った。


妄信的に突っ込んで来た主将を避けて、中段、下段、中段とくり出す。

そして、そちらに注意の向いた彼に向かって突きを繰り出した後、体を捻って上段の回し蹴りを放った。


鈍い音と同時に主将の大きな体が吹き飛んでいく。

あ~ごめんね、心の中でそう呟いて、静かに口角を上げた。


「い、1本、勝者、挑戦者」

部の主将が見事に吹き飛ぶ様を見て、焦った顔で勝ちどきを上げた主審の生徒。


周囲は信じられないものを見たとばかりに静まり返ったままだ。

さっきまで、私を鋭く睨んでいた女の子達は顔を青ざめさせ震えてる。


よしよし作戦通りね。

これで、易々と手が出せる相手じゃないって知ってもらえたね。


「響、よくやった!」

晴成が満面の笑みで拳を上げた。

それに反応するかのように、周囲が沸き上がる。


「「「「「ワー!!」」」」

私の勝利に歓声が響き渡った。


「ありがとうございました」

倒れたままの主将に向かって一礼すると、マットを降りて靴を履いた。


慌てて部員達が主将を運び出していく姿を横目にテントの中へと戻ったのだった。
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