いつか、きっと。
友也の腕の中でもがいていると、私を拘束する力が弱まって、ようやく唇が解放された。



もう起き上がっていいはずなのに。

催眠術にでもかかったように、身動きできずに友也と見つめあったままで……。



「明日美…………好きだ」



友也……………………。

いま、なんて言ったの!?



『好きだ』って聞こえたような気がしたんだけど。

空耳?

じわじわと頬が熱を持ったように熱くなってくる。

どうしよう、勘違いだったらどうしよう。

どうか勘違いではありませんように!



そんな私の胸の内を知ってか知らずか、友也が更に言葉を繋ぐ。



「一目惚れだったんだ。最初からずっと好きだった……。だから明日美、俺と」



私が待ち望んでいた、友也からの告白のはずなのに。

途中で遮るように自分の手のひらを友也の唇に押し当てた。



「待って友也、それ以上はダメ」



信じられないとでも言いたげな友也から、非難がましい目でみられたけど、ここは引くわけにいかない。

現実に引き戻さなきゃ。

私だって本当は、『俺と』の先を聞きたくてたまらなかったけど。



「こがん場所で、いつまでこがんしとると」



友也の口を覆っていた手を外し、まず自分が起き上がる。

それから友也を起こそうとするけど、階段から落ちたときに負傷した背中が痛むようでうまく起こしてやれない。



「痛ててててててっ」



「だっ、大丈夫!?ちょっ、誰か……。あっそうだ、瀬名くん!瀬名くんいるっ?」



危うく瀬名くんの存在を忘れるところだった。

私と友也を引き合わせようと画策していたくらいだから、まだ近くにいるはずだよね。



「あーあーあー。まったく想定外すぎ」



瀬名くんが痛がる友也の腕を力強く引き、なんとか起き上がらせてくれた。




「御子柴お前、病院行け。背中ヤバくね?……ってか、車の運転はできそうか」



「まあ、痛かっちゃ痛かけど。病院は行かんでも……。運転は座席に背中ばくっつけんごとすれば大丈夫やろ」



大丈夫なわけないよ。

私がなんともないのは、友也が私の体をガードしてくれたからだ。

その分、私の体重がかかって友也の背中の傷を酷くしてるかも。



「休日当番医ば調べてみるけん。もし友也になんかあったら私のせいやけん、ちゃんと診てもらおう。あっそうやった……ごめん瀬名くん…………」




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