いつか、きっと。
「分かった。おじちゃんとおばちゃんに話しに行こう。明日美との結婚ば許してもらわんばいかんし。覚悟はしとったつもりやったけど、いざとなると緊張するな……」



あれ?緊張するとか言ってるけど本当かな。

覚悟していたなんて、一体いつからなの。

お母さんもお父さんも、私たちが二人で行くこと分かってた風だし。



だけど立ち上がって身なりを気にしているところを見ると、心落ち着かない様子が窺える。

私もドキドキしてきたけど……。



「友也、大丈夫?私が一緒におるけん平気やろ。私も友也のお嫁さんになりたかけん、ちゃんとお願いするつもり。だけん……」



友也だけじゃなく、私たち二人の大事なことだから。

一緒に私も勝負かけるよ。

友也の襟に手をかけ、少し曲がったところをきれいに直し、そのまま腕を首に回した。



「緊張ばほぐす…………おまじない」



さっきの物足りなさを埋めるように、背伸びをして友也の唇に優しく触れた。

ねえ、リラックスしよう、友也。

私たちの素直な思いを届けよう。



友也が私を優しく抱きしめて、更にキスを深めてきた。

直ぐに主導権を奪われたけど、それを望んだのは私の方。


お父さんとお母さんが待ってるから、早く行かなきゃいけないけど、もう少しだけ……。

すっかり友也のペースになってしまったけど、身を任せてしたいようにさせてあげる。



「友也、すき」



優しいキスを繰り返しながら、合間で呟く。



「明日美、すきだ」



友也も私にちゃんと応えてくれる。



ほんのわずかだったけど、穏やかで幸せに溢れた時間だった。

本当はもっとずっとキスしていたいけど、"おまじない"の時間はもうおしまい。



「さ、それじゃ行くか」



「……うん」



名残惜しそうにしながらも、離れていった唇。

その代わりにしっかりと繋がれた手の温もりが、心を落ち着かせてくれる。



二人揃って玄関で靴を履き、御子柴家のドアを開けると目の前には生田家のドア。

約一週間ぶりの我が家が妙に懐かしいような、自分の家ではないような変な感じ。

私の隣には、友也がいる。

このドアを越えれば私たちはただのお隣さんではなくなってしまうのだ。



ピンポーン



友也がチャイムを鳴らした。

そうか、普通なら勝手にドアを開けて『ただいま』って帰るけど今日は違うから違和感があったんだ。



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