いつか、きっと。
「はーい」



部屋の奥からパタパタとスリッパの音が近付いてきたかと思うと、ドアが勢いよく開けられた。



「こんにちは。おばちゃんとおじちゃんに大事な話があって来ました。お邪魔してもいいですか?」



いつもよりも丁寧な物言いに、なんだか落ち着かない。



「お、お母さん…………ただいま帰りました」



私まで他人行儀な言い方をしてしまい、恥ずかしくなってきた。

こんな調子で大丈夫なんだろうか。

さっきのおまじないは全然効いてなかったようだ。



「明日美お帰り。お父さんがキリンみたいに首長くして待っとるけん、はよあがらんね。さ、友也くん奥の部屋にどうぞどうぞ」



玄関を経て、お父さんが待っているであろう部屋へと進む。

自分の家に帰ってきたという感覚をどこかに置いてきてしまったような気がしてならない。

これから私たち二人の勝負をかけるんだから、多少の緊張感は必要なのかもしれないけど。



奥の和室に入ると、お父さんが正座して待っていた。



「…………とうとう来たか」



そんなに待たせてしまった?

もしかしてずっと正座しっぱなしとか。

お父さんの様子もいつもと違いすぎだよ。



「まあ、二人ともとりあえず座らんか」



お父さんが正座しているからか、私たちも自然と正座して対面する。

私は正直言って正座は得意ではない。

友也は、大丈夫?

これから大事な話をするのに、それどころではないのだろうけど。



お母さんがお茶を淹れてきてくれた。

皆に湯呑みを配り終えたところで、お父さんから座るように促され、お母さんも席につく。



「お父さん、お母さん」



え?今の発言、私じゃないよ。

友也が私の両親をそんな風に呼ぶの、初めて聞いたから驚いてしまった。

いつもは『おじちゃん、おばちゃん』なのに。

それに友也は自分の両親だって『父ちゃん、母ちゃん』だもんね。

呼び方がいつもと違うってだけで、緊張感が半端ない。



「ずいぶん長いことお待たせしてしまい、申し訳ありません」



もしかして友也、お母さんが言ったことを本気にしてるの?

キリンみたいに首長くして待ってるって。



「なんか?謝りにきたとか。確かに今度も友也ひとりだけやったら追い返すとこやったけどな」



「えっちょっと、お父さん!私も一緒におるたい」



ていうか……"今度も"?

どういう意味?


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