いつか、きっと。
私が疑念を抱いているのに気がついたのか、友也が私の方を向いて言った。



「明日美には内緒にしとったけど、実は俺一人でここに来たことのある。おじちゃんとおばちゃんに話ば聞いてもらうために」



な、なんで?

そんなの初耳!



「でもそれっていつ?私が知らんやったってことは、私がおらん時やろ。福岡に行ってから?」



お父さんとお母さんは口を開こうとしない。

友也はどう説明すべきなのかを迷っているのか、しばらくの沈黙のあとで話し始めた。



「確かに明日美が福岡に行った後で俺はここに来た。けど、それよりももっと前の話さ。あれは確か高一の秋やったかな。明日美が宿泊学習かなんかで学校に泊まりやったときの事」



そんなの十年くらいも前じゃない。

あの宿泊会で私は未来に『友也と付き合うことになった』って報告したのを覚えている。

ま、まさか……。



「じゃあ、お母さんたち二人とも最初から知っとったってこと?」



付き合う"フリ"やったってこと。

私は友也の偽者彼女だったという事実を。

お母さんとお父さんは友也からそれを聞かされて、どんな気持ちだったんだろう。



「信じられん……」



「明日美はどうしても付き合う"フリ"って言いとうなかったやろ。けど俺も決していい加減な気持ちじゃなかったし、将来ば見据えた上でいろいろ考えた。それでどうしてもおじちゃんとおばちゃんにはきちんと説明してから明日美と付き合いたかと思った。明日美には悪かとは思うたけど、俺も譲れんかったけん……ごめん」



私がどうしても"フリ"だと言うのを拒否したから、友也も強行手段にでるしかなかったのか。

私には決して知られないように根回しして。

結局友也の方が上手だったってことね。

なんか、悔しいけど。



「私が"フリ"って言いとうなかったとは、お母さんたちに余計な心配ばさせとうなかったけんよ。だってお母さん多分気づいとったよね?私が友也のこと好きって。そいとに"フリ"とか言いきらんかった」



好きな人から『彼女になって』じゃなく『彼女の"フリ"して』と言われたなんて。

私の女としてのプライドを守るために言えなかったのかも知れない。



「お母さんとお父さんも知らんふりすると大変やったやろうね。長い間ずっと耐えてくれたとやろ?なんも言わず見守ってくれてありがとう」



心を込めて頭を下げた。



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