課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~




「ど、どうなったんですか? 羽村さん」
と真湖と海が身を乗り出して訊いてくる。

 いや、海は真湖が前のめりになったので、一緒に前のめりになっただけだが。

「なんだかわからないけど。
 家族愛に満ちあふれた光景が繰り広げられ始めたから、もう、そっとしとこうかと思って」

 そ、そうなんですか? と真湖は微妙な笑顔で聞いている。

「いや、彼女は今のままで、幸せなんだろうなと思って」

 じゃあ、別にいいやと思った、と言うと、雅喜が、

「なんだ、もう彼女とは終わったのか。
 フラれたのか?」
と残念そうにロクでもないことを訊いてくる。

 いや、付き合ってもないのに、何故、終わる……と思いながら、

「違いますよ」
と羽村は言った。
< 105 / 138 >

この作品をシェア

pagetop