課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「僕と結婚しないと、おじさんに殺されるとか言ってたけど。
 別にそうでもないみたいなんで。

 どっちかって言うと、迂闊にもらうと殺されそうでした。
 娘を不幸にするなと言って」
と言うと、雅喜は、

「莫迦か。
 そんなのは何処の家でも同じだ。

 だから、男は、それだけの覚悟がないと、他所のおうちのお嬢さんを嫁にもらってはいけないということだ」
と言ってくる。

 へー、と羽村は感心したように雅喜を見た。

「課長もそういう覚悟で真湖りんをもらったんですか?」
と訊くと、

「このタイミングで真湖りん言うな。
 一気に間抜けな感じになるから……」
と言いながらも、

「……真湖を不幸にすると、お義父さんやお義母さんやお義兄さんたちだけじゃなく。
 春子さんやホースつかんだ浩太郎にまで責め立てられそうだからな」
といつもの無表情のまま、このハシビロコウは、おのれの覚悟を語る。
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