課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 インターフォンを覗いたとき、真横で、
「やっぱりな」
と声がした。

 ひっ、と息を呑む。

 今、気配、しませんでしたよねっ?
と思いながら。

 雅喜がいつの間にか側に来て、インターフォンの画面を覗き込んでいたのだ。

「いきなりお前が電話を切ったから、様子を窺いに来たんだろ。
 俺たちが後ろで騒いでたの、聞こえてただろうから」

 早く行ってやれ、と雅喜は言ってくる。

 相変わらず、浮世離れした雰囲気の雪乃が画面の向こうに立っていた。

 後ろを通ったマンションの住人らしきサラリーマンに、こんばんは、と深々と頭を下げている。

 それにつられてか、その男も足を止め、丁寧に頭を下げ返していた。

 いやいや、なにやってんだ、と思いながら、羽村は玄関に行き、ドアを開ける。
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