課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 なんかこの子、浮世離れし過ぎてて、そこに居る感じがしないんだよねー。

 生きた女の子っぽくないっていうか、と思いながら、
「嫌いって言うんじゃないけど、まだよくわからないや」
と羽村は素直な気持ちを雪乃に告げた。

 まったく心が動いていないわけではないということは匂わせながら――。

「……なんかまだ、真湖りんのインパクトが強いしさ」

 あのラブラブ夫婦に割って入れるなどとは思ってはいないが、忘れがたいのは確かだな、と思っていると、雪乃は頷き、

「わかります。
 真湖さん、素敵な方ですもんね」
と真剣な表情で言ってきた。

 笑ってしまう。

「いや、素敵な方とか言うんじゃないでしょ。
 どうかしてるよ、あの人」

「羽村さんは、どうかしてる方がお好きなんですか?」
と雪乃はあくまでも、真面目に訊き返してくる。
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