課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「まあ、そういう意味では君も好みなのかな?
 出会った最初から、妙な人だもんね」

 そう笑いながら、ほら、行こう、と言うと、雪乃は、俯いて赤くなり、
「……はい」
と言う。

 妙な人だと言ったのに、雪乃は、好みかもしれないと言ったせいでか、照れているようだった。

 そういう顔は可愛いんだけどな、と思いながら、
「でもさ、君自身は、どうなの?
 本当に僕のこと、好き?

 なんか顔だけ好みみたいなこと言ってたけど」
と言ってみる。

 雪乃は並んで歩きながら、
「そ、そういうわけでは……」
と言いながら、まだ俯きがちだった。

 その恥じらうような横顔を見ながら、思わず言っていた。

「好きになりなよ、顔以外も」

 えっ、と雪乃は顔を上げた。
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