課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 振り向くと、雪乃は壁に貼ってある真湖たちの結婚式場のポスターを見ていた。

 ひいいいいっ。

 いつも此処に来る人たちは今更、突っ込んでこないし。

 既に壁の一部と化していて、存在を忘れていたのだ。

 しまった~。
 はがすべきだった~。

「忘れてたんだね、真湖りん」
と羽村が言ってくる。

「僕は忘れてなかったよ。
 いつも視界に入るたび、苦々しく思っていたよ」
と言う羽村から離れ、ポスターを食い入るように見ている雪乃が、

「これ、モデルさんだと思ってましたっ。
 すごいですねっ」
と無邪気に喜んでくれる。

 ありがとう……。

 ありがとうなんだけど、もうその辺で、と思う真湖は、恥ずかしさのあまり、このポスターを今すぐはがして、燃やしそうになる。

 もれなく、式場の人と雅喜の友人の設計士に、こらーっ、と怒られそうだったが。



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