課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~



 四人と赤ちゃんでお茶をしているとき、真湖は、羽村が、今、初めて彼女の名前を知ったことを知った。

「……この人、登場の仕方が、ちょっとあれだったからね。

 なんだか今まで、生き霊か物の()みたいに、実在してるんだかなんだかわからないように感じていたんだけど。

 今、名前を聞いて、ようやく、生きた人間だったんだと実感したよ。

 名前って、大事だよね」
と羽村が言うので、真湖は、

「……そうですよね。
 名前って、大事ですよね」
と呟いて、雅喜に、

「我が家にもまだ、名前のない生き物が居るだろうが」
と溜息とともに、呟き返される。

 そういう雅喜もまだ悩んでいるようだった。

 ママと古稀(こき)はぜひ、やめていただきたいが……と思いながら、腕の中の赤ちゃんを見る。
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