夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「ところで…ガゼント様は?」

いくつか知らないがヴァルミラと同じ2000年は生きているガゼントもそろそろ寿命が来てるのではないかと聞いていいのか分からず口ごもったキースにガゼントはにやりと笑う。

「私は死の世界に旅立つのはまだまだ先のようだ。ぴんぴんしている」

「そ…そうですか」

一体いくつまで生きておられるのか?不思議な方だ。

「そういやあんた、結局いったいどっちの味方なんだ?」

ラミンが思い出したようにガゼントに問いかける。
人間を裏切りミレイアを誘拐しグラージャ側に付いていたはず。
なのにグラージャの復活どころか消滅させてしまった。

「言ったであろう。私は敵とも味方とも言っていない。ただ人間とこの世界を愛した一介の魔法使いだ」

「抜かしたこと言ってんな」

「ガゼント様はグラージャとの契約があって仕方なくだったのでしょう?」

ミレイアがグラージャから聞いた話だとガゼントはグラージャを決して裏切れない契約をしていると言っていた。

「そんなものは私に乗り移ったグラージャ様が眠っている間に本人に代わって破棄済みだ」

「えっ?」

グラージャが眠っている間ということはミレイアも眠らせていた時だろう。
主を出し抜くとは侮れないお方だ。

「今回は私の魔法使いとしての血が騒ぐ愉快な展開だった。呪いに抗うお前を見てるのはなかなか興味深かったぞラミン。研究のしがいがあるというものだ。早速レポートを書き残しておくことにしよう」

「ちっ、なんだよそれ…」

不敵に笑うガゼントに納得いかないラミンは眉根を寄せる。

ガゼントしかり、モリスデンしかり…
魔法使いというものは研究馬鹿が多いのかもしれない。


でも、ミレイアは気付いている。
グラージャの側に居ながらミレイアを守っていてくれていたことを。
どんなに悪ぶっていてもガゼントは人間の味方だと確信している。

そう思ってガゼントを見ると優しい眼差しと目が合ってこっそり微笑み合った。

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