白銀のカルマ
予想外の言葉に顔が綻んだ。

まさかここまで慕われていたなんて。

今までの恋は全て辛いものでしかなかったけど、ひょっとしたらこれは師弟関係を越えた仲が築けるのでは?

初めて報われるかもしれないと、この淡い恋に期待を寄せた。

「………だから………先生には本当に感謝しています。これからもよろしくお願いします」

「………えぇっ。こちらこそ!!」

何年振りだろうか。

和巳はこの日、心底笑うことができた。

楽しく語らいあったその日の晩、亡くなった両親の仏壇に向かって嬉しそうに近況報告をした。

「………お父さん、お母さん。二人には本当に迷惑以外かけた覚えがないけどひょっとしたら今回だけはね、うまくいくかもしれないの」

『男』らしくふるまうよう常に厳しく和巳を教育してきた父。

結局、最期まで〝本当の自分″を認めようとはしてくれなかったが何だかんだ言いながらも自分の夢を応援してくれた。

父のあまりの厳しさに涙した時、否定することなく優しく寄り添ってくれた母。

両親が生きているうちに自分は何も残すことは出来なかった。

これから先も何かを残すことを保証出来ないからこそ自分は誰かに愛し愛され必要とされたい。

「いい報告が出来るように頑張るから……」と二人の遺影を眺めながら微笑んだ。
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