白銀のカルマ
それから二週間後。

正臣は無事退院し、和巳や優一らが暮らす家に戻ってきた。

まだ松葉杖をつかないと歩行が覚束なかったが、口だけは達者なもので帰って来て早々「あ~、寿司食いたい。退院祝いに寿司でも出前とってくれよ~」と叫んだ。

その太々しい態度を見て苛立った和巳は正臣の頭を軽く叩き、「バカおっしゃい!この退院におめでたい要素なんて何一つないでしょうが!自業自得よ!」と叱咤した。

「………チェッ」

至極真っ当な正論を言われても尚、舌打ちし無反省な様子の正臣。

暫く罰としてお粥生活を強いられる予感しかしなかったが、そんな正臣の前に一人の天使が降臨する。

「お寿司ならありますよー」

「へ?」

「え??どういうこと??」

「僕名義で出前取ったんで。食べましょう」

この天使は再び粋な計らいをした。

しなやかで繊細で柔らかい物腰や容姿と違い意外と太っ腹で気前の良い一面がある。

これを俗に言う『ギャップ萌え』と言うのだろうか?

こういうのも相まってますます惚れそうになった。

「どうしたの。食べないの?あれだけ騒いどいて。せっかく優一くんが出前を取ってくれたのに。」

「あ、あぁ、ああ……。」

「ごめんなさいね、優一くん」

「いえいえ、いつもお世話になってますので、ほんのお礼です」

今思うとこんなのはほんの序の口で彼は仕事の合間を縫って甲斐甲斐しく世話をしてくれた。おまけに手料理(病人食)までふるまってくれて何とその食事を口まで運んで食べさせてくれるのだ。

病院でもこんなサービスはあっただろうか?

狐にでも化かされているのではないかと思うくらい出来過ぎた時間が流れた。

「またお夕飯の時間になったら来ますね」

「あ、あぁ……うん。」

「では」
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